人生の中で、大切な人との別れは避けて通れない出来事です。
ご家族やご親族、ご友人など、大切な存在を亡くした時、悲しみと向き合いながらも「心のそばにいてほしい」と願う気持ちは、誰にでもあるものです。
そんな思いに寄り添う新しい供養のかたちとして、今「手元供養(てもとくよう)」が注目を集めています。
このコラムでは、手元供養が選ばれる背景やその意味、具体的な方法、そして現代のライフスタイルに合った供養の在り方についてご紹介します。
手元供養とは?
「手元供養」とは、遺骨や遺灰、遺品などをお墓に納めるのではなく、ご自宅で身近に保管し、供養する方法を指します。

従来のようにお墓や納骨堂に納めるのではなく、自分の生活空間に小さなスペースを設けて、故人を偲ぶ場所をつくるというものです。
現代では、仏壇を置かずに棚や家具の上にミニ仏壇や位牌を設置したり、遺骨を小さな骨壷に分骨して持つというスタイルが主流になっています。
なぜ手元供養が選ばれるのか?
近年、手元供養を選ぶ人が増えている背景には、社会的・心理的な理由があります。代表的な理由をいくつかご紹介します。

跡継ぎがいない・墓じまいをした
少子化や核家族化の影響で、先祖代々のお墓を守れない人が増加しています。
墓じまいをした後、「でも供養は続けたい」という思いから、手元供養を選ぶケースが増えています。
お墓が遠方にある・通えない
実家のお墓が遠くてなかなか通えない、高齢や体調の問題で墓参りが困難である、海外在住や転勤族で落ち着いた供養の場が持てないなど、お墓があっても通うのが困難なケースもあるでしょう。
こうした背景から、「いつでも手を合わせられる場所が欲しい」という思いに応えるのが手元供養です。
故人を身近に感じていたい
配偶者や子ども、親など、心の拠り所だった存在を亡くした場合、「できるだけ近くに感じていたい」と願う人は少なくありません。
毎日手を合わせたり、声をかけることで心の平穏や癒しを得られるのも、手元供養の大きな魅力です。
宗教や形式にとらわれない供養をしたい
宗派や伝統にこだわらず、自分らしい供養を大切にしたいという人も増えています。
手元供養は、形式ではなく「気持ち」や「つながり」を重視する現代の供養スタイルに合っているのです。
手元供養の具体的な方法
手元供養には、いくつかのスタイルがあります。ここでは主な方法をご紹介します。
ミニ仏壇(パーソナル仏壇)
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- 従来の仏壇よりも小型で、洋室にも合うデザインの仏壇
- コンパクトなスペースに、位牌や写真、供花を飾る
- ナチュラルウッドやアクリルなど、インテリアになじむ素材が人気
ミニ骨壷・分骨壷

- 遺骨の一部を小さな容器に納めて保管
- 陶器やガラス、金属など多様な素材とデザインがある
- 机や棚の上に置いて、気軽に手を合わせられる
写真+思い出の品を飾る

- 位牌や遺骨ではなく、写真や故人の遺品のみを飾る
- お花や故人の好物、手紙などを添えて、想いを形にする方法も人気
手元供養のメリットと注意点
手元供養を選んだことで生じるメリットや注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。
代表的なものを以下にまとめてみました。

メリット
- いつでもそばで手を合わせられる
- お墓や仏壇がなくても供養できる
- スペースを取らず、住環境に合わせやすい
- 家族の思い出の場として共有できる
注意点
- 遺骨を保管する場合、湿気や直射日光を避けて保管する必要がある
- 家族の中で考え方が異なる場合、事前に話し合っておくことが大切
- 将来的に供養方法を変える可能性があるなら、柔軟に対応できるスタイルを選ぶ
まとめ:供養は、あなたのかたちでいい
手元供養が支持される理由の根本には、「亡くなった人を忘れたくない、近くに感じていたい」という思いがあります。
誰にも見せなくてもいい。立派な仏壇がなくてもいい。
大切なのは、自分の心の中でどう向き合っていくかということです。

たとえば、毎朝「おはよう」と声をかけるだけでも、命日の夜にそっとキャンドルを灯すだけでも、それは確かに、深い祈りであり、供養なのです。現代の手元供養は、宗教や形式に縛られず、「あなたらしく祈ること」を大切にする新しい供養のスタイルです。
お墓がなくても、仏壇がなくても、心の中で故人とつながっていたい。
そんな想いを、あなたの暮らしの中に静かに灯す。それが、手元供養の本質です。
あなたの大切な人が、いつもすぐそばにいると感じられる場所。
それが「手元供養」という選択なのです。