
――大切な「想い」を祀るかたちの違いを知る
近年、「ペット用仏壇」という言葉を耳にする機会が増えてきました。家族の一員として長い時間を共に過ごしたペットを亡くし、「何か手を合わせる場所がほしい」「きちんと供養してあげたい」と考える方が増えているからです。ですが、ペットが死んだ際に人間同様、火葬をした後遺骨をどうすればよいのか悩むという声が多く聞かれます。
「人間用仏壇と何が違うの?」「人間用仏壇をペットに使ってはいけないの?」といった疑問を持たれる方も少なくありません。
本コラムでは、ペット用仏壇と人間用仏壇の違いを、目的・宗教性・デザイン・供養の考え方という視点からわかりやすく解説します。
供養の目的の違い

人間用仏壇は、先祖供養や仏教的な「追善供養」を行うためのものです。宗派に基づき、本尊(仏像や掛軸)を安置し、位牌を祀ることで、故人の冥福を祈り、家系をつないでいく意味合いを持ちます。
一方、ペット用仏壇の最大の目的は、飼い主の気持ちに寄り添い、想いを形にすることです。宗教的な決まりに縛られることは少なく、「ありがとう」「また会おうね」といった気持ちを込めて手を合わせるための場所として考えられています。
そのため、供養の形も自由度が高く、写真やおもちゃ、お花、おやつなどを一緒に祀ることが一般的です。

宗教性・形式の違い
人間用仏壇は、仏教の教義や宗派ごとの作法が大切にされます。浄土真宗・曹洞宗・真言宗など、それぞれに本尊や祀り方が異なり、位牌の有無や形にも意味があります。
対してペット用仏壇は、特定の宗教や宗派を前提としない場合がほとんどです。
「仏壇」という名前が付いていても、必ずしも仏教的な意味合いを強く持つわけではなく、メモリアルスペースや祈りの場として捉えられています。宗派を気にせず、飼い主自身が心を落ち着けられる形で供養できる点が特徴です。また、コンパクトで場所を選ばない手元供養といった方法もあります。
デザインとサイズの違い

人間用仏壇は、重厚感のある伝統的なデザインから、家具調のモダン仏壇まで幅広くありますが、基本的には一定の格式や寸法があります。

ペット用仏壇は、小型・軽量でインテリアになじみやすいデザインが主流です。リビングや寝室、棚の上など、身近な場所に置けるサイズ感が重視されています。
木の温もりを活かしたナチュラルなもの、写真立ての延長のようなものなど、悲しみを和らげ、日常にそっと寄り添うデザインが多いのも特徴です。カラーもポップな色合いが多く、仏具に足跡のワンポイントが施してあるものなど、人間用の仏壇とは違い、仏壇らしくない可愛らしい雰囲気のものが多いようです。

位牌や仏具の考え方の違い

人間用仏壇では、位牌は故人そのものを象徴する非常に重要な存在です。文字入れや扱いにも細かな作法があります。
ペット用仏壇では、位牌を必ず用意しなければならないわけではありません。写真やネームプレート、遺骨カプセルなど、その子を思い出せるものが中心になります。ネームプレートにペットの名前をいれてくれるサービスなどもあります。その子オリジナルの仏壇が完成します。
「形よりも気持ち」を大切にできる点が、ペット供養ならではの特徴といえるでしょう。

まとめ

「ペットにはペット用仏壇でなければいけない」「人間用仏壇を使うのはよくない」という明確な決まりはありません。
大切なのは、飼い主が心から手を合わせられるかどうかです。ペット用仏壇と人間用仏壇の違いは、宗教性や形式の厳格さよりも、供養に込める意味と自由度にあります。
ペット用仏壇は、悲しみの中にある飼い主の心を支え、これからも一緒に生きていくための「想いの居場所」です。
人間用仏壇の一角に、そっとペットの写真を置いて供養される方もいれば、ペット専用の小さな仏壇を用意して毎日話しかけるように手を合わせる方もいます。どちらも、その方にとっては正解です。
ご自身の気持ちに一番しっくりくるかたちで、静かに手を合わせられる場所を選ぶことが、何よりの供養になるのではないでしょうか。

