仏壇と共に位牌も作り替えていいの?

仏具・仏事の豆知識

お仏壇を新しくするタイミングは、ご家族にとって大きな節目のひとつです。
古くなった仏壇を新調する、引越しを機にコンパクトな仏壇へ買い替える、あるいはご両親の代から受け継いだ仏壇を今の住まいに合う形に整える──その理由はさまざまです。
そんなとき、よく寄せられるご相談が「仏壇を新しくするとき、位牌も作り替えてもいいのでしょうか?」というもの。
その考え方や注意点を宗派や供養の意味を踏まえて丁寧にご説明します。

位牌とは何か 〜故人の魂が宿る依り代〜

位牌(いはい)は、故人の戒名・俗名・命日などを記し、その「魂の依り代(よりしろ)」とされる大切な供養具です。
浄土真宗を除く多くの宗派では、「開眼供養(かいげんくよう)」を行うことで、故人の御霊が位牌に宿るとされています。


仏壇の中心に安置され、毎日のお参りや年忌法要で手を合わせる対象となる存在です。

位牌には、葬儀の際に用いる「白木位牌(しらきいはい)」と、四十九日以降に本位牌へと作り替える「本位牌」があります。


本位牌は、故人を永く祀るための正式な位牌であり、素材や形、仕上げも様々。
漆塗りの伝統的なものから、木の温もりを生かしたモダンなデザインまで、近年は住まいに合わせて選ばれる方も増えています。

仏壇と位牌を同時に新しくしてもいいの?

結論から言えば、「作り替えても構いません」
位牌は“魂の宿る象徴”ですが、それはあくまで供養の「かたち」を示すものであり、物質そのものに永遠の効力があるわけではありません。
大切なのは、故人を想う心と、その想いを受け継ぎ続けること。


したがって、古い仏壇を整理するタイミングで、位牌も新しい環境に合わせて整えることは自然なことなのです。

ただし、いくつかの注意点と、宗派ごとの考え方の違いを理解しておくことが大切です。

■ 宗派による違い

●浄土真宗の場合

 浄土真宗本願寺派・大谷派などでは、位牌を用いず「過去帳」「法名軸(ほうみょうじく)」で故人を偲ぶことが基本です。
 このため、既に位牌をお持ちの場合でも、作り替えの際には過去帳や掛け軸に切り替える方も少なくありません。

●曹洞宗・臨済宗など禅宗系

 位牌は非常に重要視され、故人の魂が宿るとされます。
 作り替えの際は、必ずお寺様に相談し、「魂抜き(たましいぬき)」と「魂入れ(たましいいれ)」の儀式を行いましょう。
 これを行うことで、古い位牌から新しい位牌へと御霊を丁寧に遷すことができます。

●真言宗・天台宗など密教系

 位牌の形式に細かな決まりはありませんが、供養の心を重視します。
 こちらも僧侶による開眼・閉眼供養を行うのが望ましいでしょう。

●日蓮宗の場合

 「霊位」ではなく「法号」を刻む点が特徴です。
 作り替えの際も、宗派の形式に則って正しい表記を行うことが大切です。

作り替えを考える主な理由

仏壇の新調と同じく、位牌の作り替えにも明確なきっかけがあります。
代表的な例を挙げてみましょう。

古くなって汚れや傷が目立つ

長年のお参りで金箔が剥がれたり、木が反ってしまう場合があります。
見た目を整えることは、決して不敬ではなく、清らかな場を保つ大切な行いです。

家族やご夫婦の位牌をまとめたい

 夫婦位牌・連名位牌など、二人を一つの位牌にまとめることで、お参りがしやすくなるだけでなく、ご供養の心もひとつに重なります。

住環境の変化に合わせたい

 洋室に合うコンパクトな仏壇へ買い替える際、従来の大型位牌が合わないこともあります。
 デザインを合わせることで、現代の暮らしに調和した新しい祈りの空間が生まれます。

作り替える際の手順と注意点

1.お寺に相談する

 まずは菩提寺や宗派のお寺に相談を。
 「魂抜き」「開眼供養」の有無や日取りなど、宗派に合わせた正式な手順を案内してくださいます。

2.古い位牌を納める(お焚き上げ)

 御霊を抜いた後の位牌は、お寺でお焚き上げしてもらうか、仏具店を通じて適切に供養します。
 決して一般ごみとして処分しないようにしましょう。

3.新しい位牌を準備する

 素材・サイズ・書体などを選びます。
 木材の種類によって印象が変わり、ウォールナットや黒檀、桜など現代的な選択肢も豊富です。
 最近では、モダン仏壇に合わせたアクリルや真鍮を使ったデザイン位牌も人気です。

4.開眼供養を行う

 新しい位牌を仏壇に安置し、お寺様に読経をしていただきます。
 その際、古い位牌の御霊を新しい位牌へ移す儀式が行われ、正式に「新たな依り代」として迎えられます。

心の区切りとしての作り替え

位牌を新しくすることは、単なる「買い替え」ではありません。
それは、これまでの年月を振り返り、新たな想いで故人と向き合う“心の節目”でもあります。
古い位牌を手にしたときの記憶、最初にお参りをした日の気持ち──
そうした想いを胸に、感謝とともに次の世代へ繋げていくことが、何よりの供養です。

近年では、ご家族で話し合いながらデザインを決めたり、故人の好きだった木や色を取り入れるケースも増えています。
たとえば、優しい桜の木で「母らしさ」を表現したり、重厚なウォールナットで「父の強さ」を形にするなど、
位牌そのものが「家族の想いの形」として生まれ変わっているのです。

まとめ 〜供養の形は時代と共に変わる〜

仏壇と位牌は、故人と家族をつなぐ大切な橋渡し。
その形や素材が変わっても、想いを受け継ぐ気持ちは変わりません。
もし今の暮らしに合わなくなったと感じたら、無理に我慢せず「よりよい祈りの形」に整えていくことをおすすめします。
その際は必ずお寺や専門店に相談し、丁寧に儀式を行うことで、安心して新たな一歩を踏み出せます。

位牌の作り替えは、「故人とのつながりを新たに紡ぎ直す」行為です。
新しい仏壇と共に、これからも心穏やかな日々をお過ごしください。

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